予感はしてた。きっかけは、もう忘れてしまったけれど。
俺って案外、いっぱいいっぱいかも。




俺からかけるのは癪だけど、話してみればのツトムの言葉通り、とりあえず、電話をしてみることにした。 むぎが出るまでの間の俺は、緊張だったり怒りだったり、そんなの。 「もしもし、いっちゃん?」むぎの声じゃない。 「…あれ?みーちゃん?」電話を耳から離して確認する。画面には みーちゃん の文字。…間違った。緊張して損した気分だ。 「どしたの?」「まちがった!」「あはは」ごめんと必死に謝ると、 いいよーとみーちゃんの優しい声。癒される。「むぎちゃんと…仲直り、した?」 「……」まだ、なんだわ。「ごめんね、あたしたちが簡単に手、振ったから」 「逢ったら普通、手くらい振るっしょ。大丈夫だよ、きっとそうじゃない」「…そっか。」 「まあ、なら早く仲直りしてね」「うん、ありがと」そろそろ切ろうと思ったら、 みーちゃんの後ろで他の声がする。「ごめんね、よんさまがかわれっていうから、かわるね」「え」 「もしもーし」と、よんさまの声。「もしもし」「いっちゃん、元気?」「まあ、はい」なぜか敬語になる、おれ。 「なんかごめんね、けんかの原因になっちゃって」「いや、それは大丈夫」 「それも遠くから盗み見して」「あ、まあ、見てしまったのはしょうがないよ」 「ふーん。もう別れれば、むぎちゃんと」うしろでみーちゃんの「ちょっとよんさま、」とい声が聞こえてくる。 「彼氏にそんなこというのもなんだけどさ、いい噂きかないんだって。むぎちゃん。」 「知ってる」もー、よんさまのばか。というみーちゃんの声が聞こえた後、電話はみーちゃんにかわった。 「もしもし?」「うん」「ごめんね、いっちゃん。よんさま、チューハイ一本で酔っちゃってさ」 なるほど、それでか。「まあ、今度は電話、間違えないでね」「うん、ありがと」それから電話の切れた音。 つーつーと、味のない響きだけが聞こえた。


拍子抜けというか、力尽きたというか。電話をかける気を失ってしまった。 まみむ、でむぎとみーちゃんの番号隣同士だもんな。初めて間違った。「あーあ」 ベッドから見上げた天上に新しいシミができてた。「うわあ」ショック。 もういい。今日は眠ろう。きっと明日になれば向こうからでも電話がくるだろ。 悪いのは俺じゃない、原因は俺じゃない。そう言い聞かせながら、目をつむった。…おやすみなさい。