…新婚旅行?ハニーったらお茶目だな、まったく。
相も変わらずなイチのメールに不覚にも笑ってしまった。
メールが届いたのは13時とちょっとすぎ。全然気づかなかった。
もう4時間もすぎてる。さすがに返事を返さないのも申し訳ないので、
返信のボタンを押すと、ジャストなタイミングでメールが来た。
イチだ。あまりにも遅すぎる返事に催促のメールだろうか。
「とうとうわかれることになった。まだだけどまちがいなくけってい」
変換してくれ。読みづらくてしょうがない。別れるってむぎちゃんと?
……俺的にはそうとうやばいんじゃないの?この運命ってやつ。うわ。
とりあえずは何があったか聞いてみなきゃわかんないし。落ち着け、おれ。
向こうからイチの声「待ったー?」「まった、さむい」「うはは、ごめん」
腫れている左の頬。(殴られたんだろうな。)「それ、」とイチの頬を指さして。
「ああ、殴られた、むぎに」「すげえな、むぎちゃん」「鞄で。」
「なんだ、素手でいったのかと思った」「いやあ、それでもきっとすごい破壊力」
「…後悔、してないの?」「まったく、といえば嘘だけど。もう殴るような子とはきっと付き合えないなー」
「まだ別れてはいないんだろ?」「うん。けど、ここまできたらもう連絡もしないっしょ」「そっか」
「あーあ」イチが見上げた空を、俺も仰いでみる。「…癒されたい」ぼそっとつぶやくイチ少年。
「新婚旅行、行くんだろ?」「そうだった。癒される暇なんかないー」「そゆこと。」
「どこつれてってくれんの?」「どこ行きたいの?」「うみ!」「言うと思った。」
「あはは」「いつもの電車のって海、行く?」「あ、けどそれは2人きりでいこう。」
「え、2人で行くんじゃねえの?」「いやー、みーちゃんに言っちゃってさ。4人で遊びに行こうって」
「…したらお前考えろや」「ダーリンったらつめたい!」「ははーん。あめとムチ!」
なんだそれ、とひたすら笑われた。とりあえず、元気だけはあるみたいだな。空元気。
家に帰ると沙耶からメールだ。「聞いた?別れたんだって。ツトムは、どうするの?」
俺が聞きたい。どうするんだ、俺(って、某コマーシャルみたいだ)