返事がこない。きっとツトムにとっても、まだ答えなんてないんだろうな。そう思った。
かわりに、みーちゃんからメールがきた。「旅行、どこ行きたい?」…行くの?
「どこでもいいかな。みんなで、ゆっくりしたいね。」
いっちゃんとむぎちゃんは結局別れちゃうのかな?
心のどこかでは、ずっとこのままな気がしてた。なんとなく、だけど。
変わらない、未来。むぎちゃんといっちゃんが、ぐだぐだなまま付き合って、相変わらず片思いな、
みーちゃん、ツトム、それからあたし。そうか、世界はやっぱり動いてるんだ。
変わらないものなんてないなら、変えてしまえばいい。…本当にそれでいい?
自分に聞いてみる。うん、多分、いいかな。あたしは、みーちゃんにはなれない。それだけの話。
ピンポーンと、チャイムを鳴らす。いくら近いとはいえ、寒い。
「はい、」ツトムの声だ。「四津谷、ですけ ど」「今あける」
しばらくするとツトムが出てきた。慣れたはずの緊張。ふう、落ち着こう、あたし。
「どした?」「この前、お鍋いただいたから、」「え、いいのに」「まあ、気にしないで」
「ん。わかった。」わたすと、「いいにおい」とツトムは笑った。ばか。
「うちのお母さんいわく、力作、らしいよ。」「ありがとつっといて。」
「うん、言っとく。」「聞いた?」「なにを?」「旅行の話」「ああ、なんとなく。みーちゃんから」
「どっか行きたいとこないの?」「…んー、ゆっくりしたいね、ってみーちゃんにも言ったよ」
「そっか」「ツトムは?」「へ?」「どこ行きたいの?」「全然決まってない」「あはは」
「…入ってく?」気を、つかってるんだろうか。
「ううん、帰ってやんなきゃなんないこと、あるし。」「そっか」「うん。それじゃあ、ね」
「おうよ。」角を曲がって見えなくなると、ツトムは家に入ったんだろう。
あたしはこっそりその後ろ姿をみた。ふう。帰ろう。おうちに帰ろう。
家につくと「ちゃんと渡してきたー?」とお母さんに聞かれた。
「ありがとつっといて、って言われた。」「力作、だって言っといた?」
「言ったよ。いいにおい、ってツトムも言ってた」満足げに笑って「そう」
お母さんはまた、テレビに視線を戻した。
いつか変わってしまうのならば、変えられないのなら、素敵な未来へ変わるように祈っておく。
誰が傷ついたとしても、せめてすてきな未来へ。
あたしは、あなたが笑ってくれるのなら。