広く青く、まぶしすぎる空
寒すぎる空気に、やわらかな光がさしこんだ




電車にゆられて1時間と30分。さすがにつかれた なんて、 あたしがため息をついている間に、いっちゃんは靴下も靴もほおりなげて海へ飛び込んだ。 ツトムは最初、そんないっちゃんをけなした目で見てたくせに、 きらきらし出した海に我慢ができなくなって、入ってしまった。 「つめてー」とかいいながら、海よりもキラキラの笑顔で笑って。 風がびゅーびゅー吹いてて街よりもずっと寒い。 砂浜であたしは寒空の下、海に入ってる二人を見てた。 誰もいない海に三人で笑ってる。 (端から見たら「最近の若い者は…」って感じなんだろうなー)


「よんさまー!」「沙耶ー!」「なにー?」「来い!」「やだ!」「なんで!?」「寒い!」 「みよ子の分も楽しむって約束しただろ?」「してない!」「おい、いいのか!友達失格だぞ!」 「いっちゃんとツトムこそ!風邪ひいたりしたら友達失格なんだからね!?」 「うるせー、こいや!」「うるさくない!」 それだけ言うと、ツトムといっちゃんは、肩を組んで耳打ちしあった。 (なにしてんだろ)腕組みをしてた手を変えたら、2人は猛スピードで走ってきて、 あたしの靴と靴下をほいほーいと空高く投げてしまった。 「え、なに、なにすんの?」二人に抱えられたあたしはそのまま海へこんにちわー。 一瞬で頭に電気が走った。かき氷食べた時より、強い電気。 あたしの背中で馬鹿笑いしてる いっちゃんとツトム。…寒い死んじゃう。 (もー、腹立つから仕返しっ)全力で二人に向かって水を浴びせる。 どれだけ寒くても、太陽は変わらずに雲の上でわらって、水をきらきらに反射させる。 ほら、太陽がそんなことするから、かっこよさが3割増しじゃない。 って本人に言ったら調子にのるね。間違いない。


みんなでべしょべしょになって、砂浜に再上陸。 「俺らみたら、みーちゃんは絶対怒るよね」 「んね、みよ子実際いたら一番に海にはいってくくせにね」 「あはは、いいじゃん愛されてるんだよ」「やっぱり?」「イチうるせーよ」「あはは」 歩くと後ろに線が残る。足跡と一緒に。夏を先取りしすぎた気分だ。


陽は暮れ始める。あなたへの想いのカウントダウン。 今はまだ、泣いたりなんてしないよ。きっと大丈夫だよね?神様、