いつまでも後ろにいるわけにはいかない
だから進むんだ、それが例え意地悪な運命だとしても




少しだけ、みんなにあうのが気まずくて一日学校を休んだら、 イチいわくみよ子も学校を休んでたらしい。 あいつもかよ、と笑えた俺の心が意外と軽かったのが可笑しくて、また笑えた。 伝えた事に後悔はない。むしろ強くなれたくらいだ。 言ったって諦められないとあれほど思っていたのに、今は単純に純粋に、 みよ子の幸せを願える気がする。…気だけだけど。 それでもやっぱりイチと沙耶のことは許せなかった。 それだけは絶対にしてほしくなかった。 まあ、今更だけど。


学校に行くと廊下から教室の中で笑っている3人の姿が見えた。 (、んだよそれ)疎外感と、傷ついたみよ子の涙が浮かんで その後の授業もいらいらするばかりだった。 説明しろ、のメールをしようとしたら、代わりに沙耶から「放課後、図書館で待ってるね」メールが来た。 「わかった」わざと短めの返事で返した。


「…よ」目があった沙耶と会釈をかわす。 聞きたいことは山ほどあったけど、呼び出したのは向こう。何か言うのを待ってみる。 「ツトム、元気?」「すっげいらいらしてる」「それは、どうして?」 「なんでお前らとみよ子が話したりしてんだよ。ちげーだろ」 「もう、仲直りしたんだよ」また、疎外感。「んだよ、それ」 「ツトムが、悪いんだからね」「は?」「うじうじしてるから」 「うじうじ?」「でも、ちゃんとみーちゃんに好きだって言えたんでしょう?」 「…ああ。でもそれとこれとどう関係してんだよ」 「どう、って?」「どうって」「あたしが、」 沙耶は息を大きく吸って、深呼吸した後「あたしがツトムを好きだから、だよ」 「……」「それはそれはずっと前から」考えが、まとまらない。思考がついていかない。 ツトムが好き?嘘だろ? 「あたしが、いっちゃんと付き合ったフリをすれば、みーちゃんとツトム付き合ったりするかなって。 ツトムが幸せなら、それでいいかなって思ったの。」 「…フリ?」「そうだよ。いっちゃんはいつまでも友達」 「んだよ、それ!ばかじゃねーの?」「ツトムが悪いんだよ」 「…はあ。」ため息しか出ない。…ったく。「余計なお世話だよ」 「知ってるよ。でも、あたしはあたしのできることをしたかっただけ」 「ふ、はははは」「ちょ、と。何わらってんの」「沙耶ってほんとバカだな」 「はい?」ふう、また一息ついて「俺さ、正直まだ全然みよ子が好きだよ」「うん」 「全然忘れられる気配すらしねーよ」「うん、だろうね」 「でも、いつまでもうじうじしてんのは俺的にやだ」 「あはは。ツトムらしいね」 「でも、さっきの言葉は正直、ちょっとだけ嬉しいと思った」 「え、」 「だから、俺は少しだけ沙耶の事をちゃんと考えてみようと思う」「…ほんとに?」 「うそ。」「え?」「嘘だよ、嬉しい嬉しい。って、うわーガラじゃない。照れんな」 「…… っ」「ん?なに?」「ばか」「るせーよ」「ばーか」 「人様が正直になってやってんのに…」 「ありがとう」「返事は、こんな感じでいいっすか?」「いいっす」


イチに一部始終をメールすると完全にばかにされた。 簡単に忘れられるはずなんてなくて。 明日だってきっとみよ子のことを考える。 忘れるために沙耶を前向きに考えるわけじゃない。 そう、自分に言い聞かせるみたいに何度も繰り返した。 これが、俺の決めた前に進む方法。もう、後ろは見ない。