本当に単純に、純粋に
俺は君が笑っていてくれて良かったと、心から思う。




ツトムは結局振られたのか、とメールで今更に気づいた。 正直、心の中ではツトムとみーちゃんに付き合ってもらいたかったんだと思う。 良い感じのバランスで、絶対幸せになれると思ってたんだけどなあ。 なんて、俺がそんなこと思っててもどうしようもないんだけど。 それにしても沙耶は幸せになれるんだろうな。そろそろ「よんさま」に戻した方がいいのだろうか。


学校へ遅刻ぎりぎりで行くと3人がいた。なんか、この感じ久々。 「おはよ、いっちゃん」みーちゃんが俺に気づいて手を振った。 廊下の方にみんなが歩みよってくる。 「遅刻かーイチー」「間に合ったって。そろそろみんなもクラスに戻った方がいんじゃない?」 「そう だね。なんかちょっと寂しい」「うん、あたしも」 「じゃあ、俺は行きまーす」「うわ、なんかそのイチむかつく」 「なんでだよ!」「あははは、確かに。」「みーちゃんまで…」 「いや、ほんとにやばいよ?あたしも行くね」「…したら俺も行くわ」 「わかったー!また後でね」そうみーちゃんが言うと同時にチャイムが鳴った。 やっべー、まじで遅刻にされるって。みんなで笑いながら走って、勢いよくドアを開けた。 担任がまだ来てなかったからセーフ。危なく転びそうになりながらも、 窓際の席に座る。クラスメイトにくじびきで無理言って変えてもらったお気に入りの席。 曇っていた空から雨がぽつぽつと窓にぶつかっていた。さっきまでは降っていなかったのに。 しかも遅れてきた担任いわく、「今日は大降りになる」だそうだ。やだなあ。


お昼休みに、みーちゃんから「2人で食べてもいい?」と訊かれた。 4人で食べると思っていたからなんだか変な感じがしたけど「いいよ。でもパン買ってきてもいい?」 断るのも変な気がした。「ツトムと沙耶、どうなるんだろうね」 「どうなんだろうね」「複雑?」「え?どうして?」「いや、なんとなくだけど」 「あたしはどっちにも幸せになって欲しいなって思います」「そっか」 みーちゃんのお弁当は相変わらずカラフルで、バランスが良さそうな感じで。 「みーちゃんのお母さん頑張ってるね」というと「昨日の残り物だよ」と笑っていた。 それがなんだかすごくみーちゃんらしいと思った。 「雨だね」「雨、だねー」「晴れるかな?」「担任の先生が大降りなるって言ってたよ」 「うっそ、うちの担任も言ってたんだけど」「えー、すごいね!なんで?」 「職員会議で今日は大降りですねって話になったのかな?」 「だったら面白いね」「うん。でも大降りにはならないといいよね」「ね」 パンのカスが床に落ちて拾うと、なにやら色んなところにも落ちていた。 このメロンパン、侮れない。仕方がないのでティッシュで一つ一つ拾った。 「…いっちゃん?」「んー?」 名前を呼ばれて、返事をして、しばらくの間があったから、 どうしたんだろうとみーちゃんの方をみると、みーちゃんは笑っていた。 「本当はね、言いたいことあったんだ」「うん」「でも、いいや」 「…気になるよ?」「あははは!じゃあ、待ってて。言える日が来るまで。」 「んー、いつごろ?」「そうだなー、わかんない」「なんだよー。」 「ふふ。でも楽しみでしょう?」「うん、楽しみにしておく」


本当はずっと、答えを知っていたのかもしれない。 目が合う度に照れくさそうに微笑むその笑顔が、何を示すのかも。 それでもいつかその日がくるまで待っていたい。 「ごちそうさま」と何かを吹っ切れたように笑うみーちゃんがいてくれて、 俺ら3人は本当に幸せなんだなと、この先も変わらずに思うんだろうなと、 至極当然のように思った。