いつも通りの土曜日、お母さんちでのご飯、ピンポーンとチャイムが鳴った。 梨をつまんでいた私はお母さんの「大家さんがポテトサラダを持ってきてくれたんだわ、 七星お願い」という言葉にあわてて梨を飲み込んで玄関へと急ぐ、戸を開ける。 立っていたのは大家さんにしてはずいぶん若い人、同い年くらい? それにポテトサラダ持っていなさそう!

「あれ、大家さんですか?」

そう尋ねるとその男の人も首をかしげて「いや、違います」との返答。 やっぱり? ですよね〜、と心の中で言って、お母さんを呼ぶ。 お母さんは「はーい」と言ってひょっこり顔を出す。 「ごめんなさいねえ」と言ったのもつかの間、男の人のことを北斗と呼んで、 その北斗さんはお母さんのことを「母さん」と呼んだ。 え、どういうこと?ちんぷんかんぷん。あ、なんかこの人どっかで見たことある。 なんてじろじろ見ているとばちーんと目があった。慌ててお母さんに目を移して、 口からぽろりと出る疑問。北斗さんの口からも、わたしと同じ疑問が出る。

「お母さん、この人誰?」
「母ちゃん、この人誰?」

そうするとお母さんはいたずらに笑う。まず私の肩をつかんで北斗さんに紹介。

「こちら七星、わたしの娘です」

うん、そうそう、そうなんです。で、あなたは?
お母さんは北斗さんの肩に手をおいて私に笑う。じゃーんとでも言いたげに。

「こちら北斗、わたしの息子です。」

驚いたけれど、納得もした。 誰かに似てると思ったのは私だ。この人、私に似てる。
「二人ともほんとに似てるのねえ」とお母さんだけがのんびり微笑んで、北斗さんに手招き。
「入ってはいって、親子丼食べましょう、七星 梨片付けてね」

どうしていいかわからず、とりあえずお母さんに従う。廊下を歩く、リビングへ向かう。 まず、梨片付けなくちゃ。うわ、 なんか緊張!ぎゃー!

「ななせ、さん」
「はいっ?」
「何歳ですか?」
「16です」
「こうこう…」
「1年生です。」
「もしかして誕生日…」
「4月10日です」
「奇遇、ですね。俺もです」
「あ、高校1年生…の、4月10日」
「はい」
「あー…、なるほど」

会話はそれで途切れる。梨をラップして冷蔵庫に戻す。 お母さんがよそった3つのご飯に親子を乗せて丼にする。うん、いい匂い。 最後の一つは自分で運んでそのまま座った。正面に北斗、さん。 横のお母さんが手をあわせるから、私たちもそれに倣う、3人で声をそろえる。

「いただきます」