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家に着くと父ちゃんはテレビを見てた。 父ちゃんの好きなキムチをおつまみにビールを飲みながら。 俺が帰ると「おう、おかえり」って笑った。俺の父ちゃんだ、俺の居場所だ。

「父ちゃん、」
「ん?風呂ならわいてるぞ。」
「俺今日七星に会った。」
「おー、黒川七星ちゃんか、かわいいだろう」
「…驚かないの?」
「父ちゃん いまものすごく驚いてる」
「あ、そうなんだ。」
「母ちゃんちに行ったのか?」
「うん。」
「そうか、確か土曜日だったな」
「なにが?」
「北斗が金曜日母ちゃんち行ってたように、
 七星ちゃんは土曜日に行ってたんだよ。毎週。」
「俺、父ちゃんと血繋がってないんだって」
「はは、そりゃ父ちゃんも知ってるよ。」
「全然気づかなかった」
「七星ちゃんもそうだったろう」
「うん、七星について詳しいね」
「七星ちゃんの父ちゃんの慎二とは仲いいからなー」
「俺ら似てると思う?」
「ああ、そっくりだ。どっちも母ちゃん似だ。でも七星ちゃんは勉強ができる」
「でも七星は運動ができない」
「ははは、そうだったな」
「ねえ、なんで俺ら引き取ることになったの?」
「ちょっと笑えるんだけどなー、父ちゃん昔母ちゃんに惚れてたんだ。
 それは慎二も一緒で、きっと二人のどっちかが母ちゃんと結婚すると思ってた。
 でも母ちゃんは大山さんと、北斗の父ちゃんと、俺らがなんもしない間に
 なんも知らない間に結婚しちまってな、二人ともすごいびっくりした。
 悲しかったけど男だから祝ったさ、そりゃあな、おめでとうなんか言って。
 でもやっぱ母ちゃん以上に好きになれる人なんていなくてなー、
 慎二もやっぱり一緒で、ずっと忘れずにいたんだ。
 そんで、子供が出来たよって連絡が来たと思ったら大山さん死んじゃって、
 幸せの絶頂にいた母ちゃんはどんぞこにまで落とされて
 俺ら見てられなかったんだ、ほっとけなかった。
 本当は北斗も七星ちゃんも引き取るつもりなんかなくって
 母ちゃんが元気になるまで預かろうって慎二と話してたんだ。
 けど母ちゃんは 自分の子を一度手放してまで母親でいれると思わない、
 母ちゃん無職だから、この子達を幸せにできる自信がない
 どうか引き取っていただけませんか、って土下座したんだ、俺らに。
 愛する人の形見みたいなお前らを手放す覚悟が、どれだけのものか、
 おれら母ちゃんに惚れ直したよ、やっぱいい女だなって。」
「結婚、すればいいじゃん」
「大山さんのこと、母ちゃんに今度聞いてみな。かなわねえなって思わされるよ」
「なんで、七星じゃなく俺だったの。」
「はは、期待させたら悪いが息子とサッカーしたいなと思っただけだ。
 慎二も慎二で、娘のピアノが聞きたいと思っただけだ。」
「ばあちゃん、反対しなかったの?」
「ばあちゃんも母ちゃんのこと良く知ってるから、支えになってやれって、」
「よく知ってるんだ?」
「慎二と俺と母ちゃんは幼なじみだからさ、って知らなかったか?」
「うん、初耳。そうだったんだ。」
「母ちゃんさ、育ててるのは父ちゃんだからって気をつかって
 あんまり北斗に会いたいって言わないんだ。会いたいに決まってるのにな。
 それは北斗も同じだろ?母ちゃんにもっと会えたらなって思ったことあったろ?」
「うん、まあ。」
「母ちゃんの決意を汲み取って、今までは週に1回だったけど
 本当の事も知ったことだし、もう北斗も子供じゃない、
 七星ちゃんと一緒にもっと会いに行ってやれ。
 一人で一生懸命働いて誰からの援助も受けずに生きてる母ちゃん支えてやれ。
 母ちゃんと住みたかったら住んでもいいぞ。」

父ちゃん、ありがとう、

「父ちゃん、ありがとう。
 でも俺の父ちゃんは父ちゃんだよ、父ちゃんがいいなら俺はここに住む。」
「ばかだな、良くないわけないだろう。」
「ありがと。じゃ、俺先にお風呂に入るねー」
「ん、いってらっしゃい」


お風呂の中でばれたらかっこ悪いからなるべく静かに泣いた。 俺母ちゃんの子でよかったな、父ちゃんに引き取ってもらってよかったな。 たまにむかついたりもするけど、愛されてるんだな。うん、帰る家はここ、間違ってない。 サッカー、頑張ろう。勉強も七星に教えてもらおう。