行ってきます、と外に出て白い息。つめたい空気。 同じ電車に同じ制服、いつも通りの毎日がまたスタート。 あの日北斗に出逢ったのが本当夢みたい、変なの、わたしと同じ羊水をまとってたなんて。 ずっとそのことばかり考えていたら、授業を何にも聞かずにお昼になった。 お弁当を食べに春ちゃんが私の前に座る、同じ机にお弁当を広げる。 オムハヤシだー、いいないいな。

「オムハヤシ、いいね」
「ひとくち食べていーよー」
「春ちゃんやさしい…」
「七星なんかあったの?今日ノート何も書いてないでしょう」
「春ちゃんくわしい…」
「アナタの右斜め後ろですからね、嫌でも見えます」
「嫌なんだ」
「そうじゃなくて、どうしたのーって。ばか」
「あのさー」
「うん?」
「私に生き別れのきょうだいがいるって言ったら信じる?」
「信じない」
「ですよね〜」
「え、誰?イケメン?」
「私と、お母さんにそっくりだった。」
「お母さんって別居中の?」
「それ。ってそれ以外にお母さんいないよ。」
「…そうなってくるとリアルだね」
「そうなんだ?」
「だってお父さんとお母さん仲良いのに別居って言ってたじゃん」
「うん、ちなみにそのお父さんと私 血つながってないんだって。」
「ちょっ…もうちんぷんかんぷん」
「私もちんぷんかんぷん」

食べる?と差し出してくれたスプーンをありがたくいただく。 卵ふわふわのオムハヤシ、おいしい、ほっこり。

「ちなみにその生き別れくんは丸井くんの友達だって」
「おまるくんの?え、同い年?双子?」
「そうなんです、あとサッカー部だって」
「え、木下ほ…ほくとくん…、だよね。うわーほんとだ顔そっくり」
「なんで知ってるの?」
「イケメンだから」
「あ、ああそうですか」

すぱーんと言い切る春ちゃんが可笑しかった。春ちゃんらしい。 でも丸井くんはイケメンじゃないんだよなあ、春ちゃん自分でも言ってたし。 おまるくんは顔じゃないって。ふふ、かわいい。

「なんで今まで気づかなかったんだろー!男と女だからか、そういうことか!」
「大興奮だね」
「…ほんとに双子?」
「らしい、なんで?」
「北斗くんすっごいサッカーうまいよ、一年生で多分一番上手。」
「それは私に運動音痴って言いたいの?」
「うん」
「うるさいなあ もう。」
「でも北斗くん結構おばからしいよ」
「あー、私もそれ聞いた。勉強教えてって言われた。」
「色々似なかったね、顔はそっくりだけど」
「あはは、そうだねー」

笑った私とは正反対の顔をする春ちゃん。 急にもぐもぐとオムハヤシを食べ始めてしまった。 ちらちら私の方を見ながら、ぱくぱく箸ではなくスプーンを進める。

「…なに?」
「お父さんとは、大丈夫?」
「なにが?」
「んーなんでもない」
「血つながってないから?」
「う、ん」
「うん全然大丈夫。だって私お父さんの子だもん」
「そっか。」
「ほんとのお父さんは死んじゃったんだって」
「そう なんだ」
「お父さんからちゃんと見えるように、北斗と七星でほくとしちせい」
「おおー、ほんとだ。星座とかロマンチックな名前」
「でしょう。」
「あれ?自己紹介で七つの星でらっきーです、みたいなこと言ってなかった?」
「そう思ってたの!でもお母さんの嘘だったらしい」
「ふはは、ドンマイ」
「ね、今まで嘘教えられてた。かなしー」
「…友達がいきなり双子って変な感じ」
「それは私のせりふ!ずっと一人っ子だと思ってたのにいきなりきょうだいって、
 しかも双子って、お父さんと血つながってないって、びっくり。
 いままでの16年間なんだったのー」
「あはは、いいなーわたしも双子になりたいー」
「なろうと思ってなれるわけじゃないでしょ、」


そう言うと春ちゃんが だよねーと言って笑った。 あ、なんか話したらちょっとすっきりした、いい感じ!やったね! ご飯が食べ終わった頃ケータイを開くと北斗からメールが来ていた。 明日勉強教えて、だって。そういえばテスト近いんだっけ、あれ違ったっけ。 左手の親指で返事を打つ、いいよ どこで? すぐ返事がきそう、北斗メール打つの早そうだなあ。