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生まれてこのかた、おじいちゃんとおばあちゃんに会ったことがない。 ということを最近ふと思った。 うちにはいないんだろうなと、誰に言われるでもなく勝手にそう思っていたから、 そういうもんなんだろうなと決め付けていたから、 北斗と出会って、お父さんと血がつながっていないことを知って、 なんだか気になっていた。北斗におじいちゃんとおばあちゃんはいるのかなあ。

「いるよ」

返ってきたのは予想以上の 当たり前 の言葉。 「七星にはいないの?」だなんて、そんなきょとんとした顔で。

「会ったこと、ない」
「あ、ごめん。」
「北斗のおじいちゃんって…」
「ん?」
「お父さん側?」
「うん。」
「そっか。」
「母ちゃん側には会ったことないよ。」
「そうなの?」
「七星もないのに俺だけ会えるわけないじゃん。
 んなさみしーこと考えなくて大丈夫だって。」
「…ありがと、」
「でも七星は父ちゃん側のじいちゃんに…」
「今度会うらしい。」
「え、やったじゃん!」
「…いいのかなあ」
「よくないの?」
「なんかね、お父さん就職してから一回も帰ってないんだって。
 おじいちゃんは頭のすっごく堅い人だから、
 きっと私を傷つけるって心配したらしい、よ。複雑!」
「傷つけるって…、血繋がってないとか?」
「お母さんがお父さんを利用したとか、
 私を孫だと認めないとか、そういう感じかなあ?」

返事がない北斗を見つめると、すごく悲しい顔をしていた。 言葉を探しているような、想像のおじいちゃんに怒りのような悔しさのような、 きっとそういう感情を抱いているんだろうなと思う。 北斗のおじいちゃんとおばあちゃんは、きっとすごく優しいんだろうなあ。 ちょっと会ってみたいかも。

「気にしないで大丈夫、まだほんとに言われたわけじゃないから、ね」
「そっか。」
「北斗のおじいちゃんとおばあちゃんってどんな人?」
「めっちゃうけるよ、かわいいの。あ、会ってみる?
 七星のおじいちゃん達に会う前に、練習がてら。」
「ほんとに?ちょっと会ってみたい。」
「いーよ、そしたらじいちゃんばあちゃんに言っておく」
「でも忙しそうだったらいいからね」
「じいちゃん達に七星のこと教えたら、絶対会いたがるよ。
 そんですげーかわいがると思う、だから」
「…ん?」
「んー、なんでもない」
「私のおじいちゃん達が意地悪でも大丈夫、って?」
「そう それ。って俺めっちゃ失礼だよなー、まだ七星すら会ってないのに」
「ううん、ありがとう。
 北斗のおじいちゃんとおばあちゃんによろしくって言っといて」
「おっけー」
「あ、そいえば英語どうだった?」
「いやー、七星の言ってたところ全部出た!ほんとすげーな。
 こんな自信ある英語のテスト初めて。七星さまさまです」
「さすがでしょ、って言っても努力したのは北斗だよ」
「うお、照れる」
「はは。おつかれさまでーす。あと何教科?」
「3教科。月曜日で終わり。」
「いいの?これからお母さんのとこ、ご飯食べに行って。
 おうちで勉強しなくて大丈夫なんですか?」
「英語ができたし、あとはよゆー!土曜日と日曜日やる予定!」
「そっか、がんば」
「今日のご飯なんだろ、」
「明日はチャーハン食べたいって言っておいて」
「おっけー」

「じゃあね」と言って電車を降りた。 今までどんなに乗っても会うことなんてなかったのに、 まさか同じ電車の同じ車両に乗ってるなんて。ふう、とため息。 思い出すのは 突然聞いたお父さんからのおじいちゃんの話。 いつ とははっきり聞いていないけどお父さんの口ぶりだと、 きっとすぐ行くことになりそうだ。 でもその前に北斗のおじいちゃんとおばあちゃんに 会えたらいいなあ、きっと素敵な人たちなんだろうなあ。 オレンジ色の空の下、がたんごとんと電車のゆく音を聞きながら ゆっくりゆっくり歩いた。