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ホットプレートを母ちゃんとふたり、つっつく。 今日はどうやら忙しかったらしい。 今から一緒に作るという魂胆で母ちゃんはたっぷりの野菜を切って待っていた。 まあいいんだけどさ、おなかすっげーすいてるけど耐えてみせます。 母ちゃん特製のタレで作るやきそばはおいしいから、耐えてみせます。

「母ちゃん」
「んー?」
「俺らのじいちゃんとばあちゃんっている?」
「いるわよー。」

もっとびっくりされるかと思ったのに、全然普通で、 なんのためらいもなく言われたことに俺がびっくりした。 そうか、いるんだ。

「そう なんだ」
「会ってみたい?」
「あ、うん。まあ」
「そしたら連絡しておくわ、晃さんのお父様方にも。」

こんなにも、あっさり。

「ほんとの父ちゃんの、じいちゃんたち、かあ。」
「夏休みとかでいいかしら?北斗も七星も忙しくない日がいいわね」
「合宿とかの日にちわかったら、メールする。」
「どうして急におじいちゃんとおばあちゃんのこと、気になったの?」
「七星とさっき、電車で会って」
「あら、七星も来ればよかったのに。」
「明日来るからいいって、言ってた。
 あ、明日はチャーハンがいいって言ってたよ」
「わかったわ、明日はチャーハンね。」
「俺は父ちゃんのじいちゃんとばあちゃんが当たり前にいたけど、
 七星は会ったことないって言ってて。
 なんか七星のじいちゃんは厳しい人だって言ってて、」
「そうね〜、七星のお父さん全然実家帰ってないみたいだしね」
「母ちゃんもあったことある?」
「何回か、ね。それもずっと子供のころ。」
「どんな人?」
「あんまり覚えてないなあ。七星のお父さんの家遊びに行っても
 仕事でいないっていうことばかりだったから。
 おばあちゃんの方はゆったりした、人なんだけどね」

じゅーじゅーと音と煙がたつ。 もくもく、いいにおいだ。麺をいれて、水を少しだけ入れて ほぐしていく。ぐるぐる、まぜながらほぐしていく。

「そのうち、会いに行くんだって」
「あら、そうなの。」
「七星大丈夫かな」
「どうして?」
「きついこと、言われないかなって」
「ふふ、それ慎二さんも思っていそうね。
 そんな人じゃないのになあ、厳しいけど、ひどい人ではないのよ。
 きちんと奥に優しさを持っている人よ」
「…、そっか。なら良かった。」
「北斗、七星の心配してたの?」
「ちょっと ね。俺にはあって七星にはないことなんて不公平じゃん。
 双子なのに。だからせめて、って。ちょっと思っただけ」
「へー、偉いわねえ」
「母ちゃんの父ちゃんたちってどんな人?」
「ふつうの人よ」
「…それだけ?」
「会ってみればわかるわ、ふつうだなって思うわよ」
「ふーん、じゃあ父ちゃんの父ちゃんたちは?」
「明るい人たち。それからすっごく優しい人たち。
 晃さんの顔はお父さん似ね。それがね、すごくそっくりなのよ。
 若いころの写真、遊びに行ったときにでも見せてもらいなさい。
 お父さんって生きてたらこんな顔だったのかな、って。」

なんにも言えなくなってる俺に、気づかないふりをしているのだろう母ちゃんは 「ソース、かけて」とソースを渡してくる。 ぐるっと一周、じゅわじゅわといい音といいにおい。 おなかがぐーぐー言ってる、口から唾液があふれてる。 「あー、はやく食べたい。」とつぶやくと「もうすぐじゃない」母ちゃんは笑った。