夏休みに入る3日前、夏休みの宿題を与えられた。
しょっちのお母さんに「しょっちの入院の面倒を見てね」と頼まれてしまった。 どうしてわたしが、と少しイヤな顔をすると、笑顔で「7日間、ハワイへ行くの」と言われて、 イヤですとは言えなかった(態度には出したけど)。 夫婦2人で行くらしい。まあ、なんとも羨ましい限りだ。
しょっちにはお姉ちゃんがいるが(ルカさん。すごく美人!)、仕事で忙しくてしょっちの面倒を 見る暇などないらしい。 他の人もいるんじゃないかと、色々考えを巡らせてみたものの、 結論から言ってきっと簡単で手っ取り早いのは、わたし という答えになったのだと思う。 自分でもその結果にちょっと納得してしまったし。
ちょっとリッチなお土産を条件に、わたしはいつもとは違う宿題を受け取ることになる。 今年の夏の最初の思い出は、なにやら緑が丘総合病院の日々になりそうだ。



*



しょっちは小学校3年生の時にバスケを始めた。 わたしも同じ時にやらされていたのだけれど、すぐにやめてしまっていた。 球技はどうも苦手だったことも理由にあるのだけれど、 一緒にやっていた女の子たちとどうも合わなかったこともその内の一つだ。 やっておけばもう少し足が速かったりしたのかな、と今も思うのだけれど、 それはやっぱり思うだけで終わってしまう。 だって、体育の成績は3の下。自慢じゃないけれど、それ以上の成績をとったことはない。 まあ、別にいいけど。
そんな私と違って、しょっちには多分すごく向いていたんだと思う。 ぐんぐん伸びていたし、それに見合うだけの努力もしていたのを、 遠巻きで眺めていただけのわたしでも知っている。
頑張り屋さんで、人思い、周りに気を使えるしょっちは、この間も迷うことなく部長に抜擢されていた。 バスケが強いと言われるこの高校での部長は、他校からの注目も浴びる。 そのせいでかわいい女の子たちからアドレスを聞かれているのを見かけたこともある。 しょっちのくせに。ちょっと生意気。

けがをしたのは、春の終わりごろ。 今となっては凄く前のように感じるけれど、カレンダーで見ると割と最近。 後輩の不注意に巻き込まれて、しょっちは足を怪我してしまった。 その日からずっとしょっちはバスケをしていない。 歩くことはできるけれど、走ることはできないとお医者さんに言われたらしい。 後輩くんは色んな人から責められてすごくへこんでいたみたいだけれど、 しょっちはきっと笑いながら許したのだろう。そういう人だ。

今回の入院はそれの手術で、だいたい退院まで夏休みいっぱいかかるらしい。 完治して、またバスケをできるようになるには、秋くらいまでかかるとしょっちのお母さんは言っていた。 あたしはその7日間だけ彼のお手伝いをする。 具体的には果物を持って行ってあげたり、洗濯物を運んだり(うちで洗ってあげるらしい)、 端的に言えば、しょっちのパシリってとこかなあ。 まあいいや。宿題を受け取ったからには最後までやりましょう。 ええ、完璧な状態で提出してみますとも。ちょっとリッチなお土産のために。
一度も行ったことのない緑が丘総合病院への地図を片手に、決意。 しょっちにメールしとこう。覚悟しとけよ、って。