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午後1時、今日のしょっちの病室はきれいな満点の星空だ。


「ちゃんとしょっちと話すの久しぶりだよね」
「昨日のぞみ寝坊するし、俺寝てたし」
「おとといはスイカ割りだったし。」
「のぞみスイカ食べれてラッキーだったじゃん」
「ね!それ思ったよ。すごいおいしかったし。」
「さすがあいつらの選んだスイカだなあ」
「あ、やっぱりみんなからのお土産だったんだ?」
「そう」
「ご馳走様でしたって言っておいて」
「おう」
「そいえば誰かにばれて怒られたりしなかった?」
「栗原さんは俺の部屋来て、スイカ食べたんだ?いいなー って」
「それだけ?」
「それだけだった、けど俺内心めっちゃ焦ってたから」

わたしが笑うと、しょっちは「いや、まじめに」と笑って、少し空白。 ふたりで無言のまま天井を見上げる。きれいな、星たち。 というのも、昨日の夜会社の飲み会から酔っぱらって帰ってきたお父さんが、 手のひらサイズのプラネタリウムを持ってきたのだ。 ビンゴで当てたのだと、誇らしげだった。いや、自慢されても…。
わたしに渡したので、てっきりもらえると思ったのに「しょっちへのプレゼント」と言って怒られた。 まあ、いいんだけどね。一緒に見ればいいだけだし。 しょっちが退院したら頂戴ね、と約束もした。


「きれいだよなー」
「ね、思ってたよりキレイだった。」
「あれ、北斗七星?」
「しょっち知ってるの?」
「ごめん適当に言ってみた」
「はは、なにそれ」


「あ、そうだ。川村さくらだっけ?」としょっちがぽつりと独り言のように尋ねた。 昨日メールでさくらちゃんの話を少しだけしたのだ。

「そうだよ」
「その子結構有名人らしいよ」
「え、どういうこと?」
「なんか病院歴長いから、お友達がたくさんいるらしい」
「…なんでしょっちそんなこと知ってるの?」
「昨日飲み物買いに行ってたら知らないおじさん達が
 さくらちゃんがね〜とかなんとかって言ってたから」
「へー、耳いいね」
「だろ」
「でもそれ別のさくらちゃんっていう可能性もない?」
「あ、なるほど」


「すっかり川村さくらさんだと思い込んじゃったよ」薄暗い闇の中でしょっちが笑ったのが見えた。 光の粒たちはそれぞれに輝いて、触れられそうで、触れられない。 それがすこし寂しくて もどかしくて、しょっちを見ると、 笑う顔がまるで星みたいだ、と思った。 でも消えてしまいそうで、つい 手を伸ばしてしまう。  触れる。触れて、しまう。
「のぞみ…?」というしょっちの声で、はっとした。驚いた顔をしている。わたしも、しょっちも。 あはは、なんて笑って誤魔化して、急いでしょっちの頬にあった手を膝の上に戻す。


「ごめん、ぼーっとしてたや」
「はは。どうしたのぞみ」

嫌な顔をしていないしょっちに安心した。どうしたんだろ、わたし。
「暗いから、しょっちの顔を確認しとこうと、思って」なんてよくわからないことを言う。 言い訳にもなってないし。ばかじゃんー。今更に恥ずかしくなってくる。
そのまま「じゃあ、帰るね」と冷静ぶって出てきた。心臓はうるさいままに駆け足で自転車置き場まで行く。 触れた右手は、熱い。ぎゅっと強く握って逃げるように自転車をこいだ。