行ってほしくない、まだまだ一緒にいたい

君に必死で話をする
少しでも長く一緒にいたいから、一言でも多くしゃべる
これが今、僕に出来る最大の事だから


紡がれたことば


君が飽きてしまわないように、しゃべる
君が「もう行くね」なんて言ってしまわないように、
君が時計の針を気にしないように
僕はくるったようにしゃべり続けた

でも、やっぱり、そんなにうまいこといかなくて
一度君が腕時計を見てしまうと、僕はその続きを話せなくなってしまった

「それで?」
「え?」

君は話の続きを訊ねた。
僕は「ごめん」なんて中途半端に謝った。
何も言えない気まずい時間が、僕らをすり抜けていく

「ありがとうね」

君から発せられた言葉はあまりにも意外に感謝を告げられた。
僕の頭上にクエスチョンマークがうかぶ


「あたしも、さよならなんてしたくないよ」
「…うん」

ひとつ、小さく頷いた


「けどごめん、行くね」


僕は爪の痕がつくほどに自分の拳をつよく、する。

君は切符を買って僕が踏み込めない向こう側へと行ってしまう


「ゆいこ!」


たった5歩くらいのところなのに、僕が大声で呼ぶから驚いて振り返った
「どうしたの?」と言って。

「あの、その」

最後の足掻きだ。君と僕をつなぐための最後の。


「すきだよ、ゆいこ」

君は満面の笑みの上に涙を浮かべて
「あたしもだよ」とつぶやいた後、静かに涙をこぼした


汽車が出発の合図を告げた。

「じゃあ、な」
「うん、ばいばい」


そういって、僕らは反対方向へと歩き出した
これが、きっと僕らの始まりで、おわり。




(07,21)

こ、これも長い気がするよ…!!!
裏設定は、ゆいこちゃんが死んじゃって、それでも不完全な身体で戻ってくるの。
彼と出会えてこんな感じになったらな、と。
反対方向は生きると死ぬと。
天国の汽車は彼にとって果てしなく遠い。