もし、あの時に阿部君がいなかったら
あたしの世界は終わってた、かもしれない。



大好きだった人にさよならを告げられた、1学期の終わり。

夏休みになったら、手をつないで海に行けたらなとか
お祭りには浴衣着ていってびっくりさせようとか
浮かれていたのは、あたしだけで。



さよならを言う、あの人の顔を思い出すたび出てくる涙。



阿部君とつき合うことになった時「まだ、あたしあの人のこと好きだよ」、そう言うと
「それでもいい」と少し寂しそうに笑った。


もっと早くに阿部君と出逢えれたなら、別の未来があったかな?


夏休みは、必死にたくさん、たくさん予定を作った。
友達も気を使ってくれて、いっぱい電話もしてくれた
けど、なんか足りなくて、ふいに思い出すと苦しくなった

毎日のように遊んで、自然と笑顔はでるけど、きっと上手くは笑えてない。


阿部君と遊ぶときも、きっとそう。
だって、時々みせる、しわを寄せた苦しそうな顔。


あたしのしてること、間違ってるってわかってるけど
想いが重なりすぎていったいどれが正しいのか、見えてこないよ



阿部君はやさしい。優しすぎて逆に苦しくなる。
どうしてあたしは、あたしを好きだと言ってくれる人を好きになれないのだろう。
どうしてあたしは、いつまでもあんな人のこと好きでいるんだろう

幸せになりたい。
けど、阿部君とじゃ、きっと彼をつらくさせるだけ。

一緒にいる時間は幸せだけど、どこかで無理してる。
阿部君もそれに気づいてる


ああ、あの時泣きじゃくって、しがみついて「好きなの」って言えばよかったかな。
さよならを言われたとき、あたしは笑って「いいよ」と言った。
最後の嘘をついた
ほんとのあたしは、こんなにも不細工だよ。


阿部君から「今から会えない?」のメールが来た。
「いいよ」そう送ると、「今公園にいるんだ」という返事が返ってきた。
そんな一言、たったの一言なのに、ほっとあったかくなる。
阿部君の優しさのおかげだね。




「阿部君」
呼んだらこっちをみてにこりと笑った

「吉原、久しぶり」
「なんかあってなかったね」
「今日何してたの?」
「ずーっと家でごろごろしてた」


そっか、で会話が終わった。
とりあえず、阿部君のとなりのブランコにのる。


ぎーこぎーこ、錆びれた音だけが公園内に響いた。



「吉原はさ、まだあいつのことが好き?」

あたしは、何も言えなかった。

「俺と一緒にいて楽しい?」
「うん、ありがとう、ね」

阿部君の顔がゆがんだ。
別れを言われると思ったのだろうか。

「吉原!」
公園に響く大きな声にびっくりして、肩が揺れると
そんなつもりじゃないんだ、とでも言うように「ごめん」と言った。


「、どしたの?」
「なんでもない」

阿部君はあたしの中で、大切なんだ。 でも、あまりにも中途半端すぎる






「これじゃあまるで、阿部君を利用してるだけだよ?」





阿部君の隣は居心地がいい。
けど、その甘さが阿部君を苦しめているとしたら?
傷ついていい、なんて言ってたけど。
これ以上中途半端にしていちゃだめだ、きっと。


「それでもいいよ、俺は。」


なんで、そんな事言えちゃうの?



あたしの問いかけは、想像以上に震えていた


「阿部君を傷つけてるんだよ?利用してるんだよ?」

そんなの、許されることじゃないじゃない

「簡単なことだよ。」
「かんたんじゃ…!」
「だって、吉原が俺に振り向けばいいだけの話だから」


あの日とは違う、寂しそうな笑顔なんかじゃなかった。


「だって、阿部君の優しさにつけこんでるだけだよ、あたし」
「うん、いいじゃん。俺がいいって言ってるんだから」











「好きに、なっちゃうよ?」

小声で言ったのは、こぼれそうになる涙を必死にとめていたから。

「あたし、嫌な女だよ?つい最近まであの人のこと考えてたのに、優しい人いたら、すぐそっちにいっちゃうような、だめな女だよ?」

「じゃあ俺は、そんなだめな女好きになった、だめな男でいいよ」


そう言って、阿部君はあたしを大きな腕で抱きしめた。
阿部君の乗っていたブランコが、おりた反動で揺れている




揺れるブランコ




あの時、終わりだと思った世界は、ブランコの上で、阿部君の腕のなかで再び回り始めた


(08,19)

復活なお話、ぱーとつー。
これも最初のサイトの。何回も書き直ししたなあ。
ああーなんか中途半端。けど復活させれたので満足ー