飛べない豚はただの豚。
じゃあ、飛べない鳥は?
誰かが昔、翼は空を飛ぶための手段だと言っていたけど
空を飛べない翼を、なんと呼べばいいんだろう。
きっと僕は、もう必要ない
ピアノを弾けなくなった僕の存在価値はゼロに等しい。
たまらなく楽しかったはずのピアノ
今は鍵盤ひとつを押すのでさえ、怖い。
期待が多すぎてプレッシャーに負けたのだろうか。
緊張してしまったのだろうか。
それとも、あの瞳が怖くなったのだろうか。
舞台の上で、いすに座ったまま、僕は何もできなかった。
そりゃあもう、迷惑な話だろうだろう。
天才と謳われた幼い僕の音を、高いお金をだして聞きにくるひとがいる。
なのに、そんな天才がピアノを前にして何もしない。
お母さんが「次は、できるわよね?」と言った。
僕は、僕の嫌いな目だと気づいて、手を振り払って逃げた。
カメラやマイクを持った人たちが駆け寄ったが、僕の前にお母さんが出た。
「次は、大丈夫ですから」と、また僕の嫌いな目をした。
その目は、僕のことをお金にしか見えてない目だ。
ただ、ひとりだけ、先生はわかってくれた。
何も言わずに抱きしめてくれた。
そのあったかさがうれしくて、僕はわんわんと泣いた
「僕は、もうピアノを弾けません」
僕は逃げてしまいました。
先生にそう告げると、先生は笑った。
「大丈夫だよ、ピアノはそんなやわなやつじゃないのさ」
「でも、弾きたくない」
「無理して弾く必要も無い、けど、一生弾かないんじゃ可哀想だろ?」
飛べない鳥
「ピアノを弾けない僕を、きっとお母さんは愛さない。」
それだけが、怖かったのに、逃げ出してしまった。
僕自身が弱かったせい
「お母さんが愛さないなんて、そんなバカな話、ないよ」
ぽんぽんと頭をなでて、先生は僕をひきよせた。
追いかけてこないお母さんを待つ。
その間苦しくて、僕はもう一度、大きな声で泣いた。
(08,20)
天才とお母さんとその先生と世の中。
ピアノの音、大好きです。
これ、長くできたらいいけど…無理かな?