わざと触れてみた小指。
どうしてか、震えているあたしの2番目に短い指先。
なんだか気づいたらよく目が合うな、と思っていた。
あたしと目を合わせる度、照れくさそうに笑って視線を逸らして、
共通の友達に「最近あいつの事、どう思う?」とか聞かれたりして。
もうここまでくるときっと自意識過剰なんかじゃない。
長野くんは、あたしの事がきっと好き。
アドレスを聞かれてから、よくメールをするようになった。
2日に1回ペースでメールがくる。
「明日時間割変更あったっけ?」とか、
「宿題わかんないから教えて」みたいな。
何かある度に、メールが来る。
少し嬉しいのだけれど、少し面倒。
今は誰のことも好きになるつもりはないのだ。
心が痛む原因はしゅんちゃん。
あたしの長く長く片思いしていた人。
ふられてから1ヶ月が経とうとしていた。
告白してからすぐは気まずくって上手に話せなかったのだけれど
今は、まだ少しぎこちないけれど話せるようになった。
だけれどその度にまた、あたしはしゅんちゃんのことがしばしば
好きだなあと何度も思うのだ。
そりゃあ、告白する前には戻れない。
今だってしゅんちゃんの前じゃ上手に話せなくなったりする。
よく、泣きたくなったりする。
もう叶わないとわかってしまっているのに、
あたしの袖を小さくつまんで、何度でも振り向かせる。
今は、今だけは他の誰のことも好きでいたくないのだ。
まだしゅんちゃんのことを純粋に思う あたしでいたい。
ずるいかもしれないけれど、しゅんちゃんのことを健気に思える間は、
これっぽっちの想いだけでも「好きだ」と言っていたいのだ。
歩いてきた道たちが、まだ忘れないで、そう言って泣いている。
もうどうにでもなってしまえ が、あたしの本心。
落ちるとこまで落ちれば、嫌いになれるかもしれない。
あたしは長野くんの気持ちに甘えることにした。
最低だとは知っているけれど、もうどうでもよかった。
気のあるフリをしてみせよう、そう思った。
長野くんは話せば話すほどかわいい人だった。
くしゃみが大きいことがコンプレックスだったり
照れると耳を触ったり、まつげがふさふさだったり。
あたしにはないような、女のあたしよりも可愛いところがたくさんあった。
メールの回数も増えたし、しょっちゅう電話もするようになった。
気が付けば、あたしの中のしゅんちゃんが薄くなっていた
あんなに大好きだったはずの笑顔も簡単には思い出せなくて
出てくるのは長野君の照れた笑顔
わざとぶつけてみた小指と小指
顔が熱くなったのは、あたしの方で
思わずトイレに駆け込んだ。
こんなにも震えると思っていなかった。
あたしの頭よりも、ずっと正直に心を教えてくれたのは、
未だふるえの止まらないこの小指でした。