そこから ぼくを見ていて 「ここにいるよ!」
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「おほしさま、そこってどんなところなんだい?」

暗闇の中、しろくまは言う。おほしさまは笑ってるけれど、なにも言わない。
だから代わりに月が答える。しょうがないなあって顔をしながら。

「そことそんなに、かわらないよ」
「うそだ。だってそこはそんなに高いじゃないか」

少しむっとしたしろくまは、とがった声。
そっと包むように月が言う。ほら、みてごらん、と。

「たとえばよく晴れた日、その水面は空の色になる」
「だけどここは 空じゃない」
「陽が沈めば、その海も夜になる」
「だけどここは、そこじゃないよ」
「そこにも僕はいるだろう?」
「いないよ」
「ほら ちゃんと見て? そこに僕はいるだろう?」


しろくまは いつまでたってもわかってくれない月に、いらだった。
前足を動かして水面をゆらす。月も星も、ゆがむ。

ぴちゃぴちゃちゃっぷん ちゃっぷんぴちゃぴちゃ

ほらね、これは君じゃない。 ここは、そこじゃない。
僕はここにひとりだけど、君はひとりじゃない。
ねえ月、それがどれだけ寂しいことか、わかるかい?

ぴちゃぴちゃちゃっぷん ちゃっぷんぴちゃぴちゃ


「しろくま、踊り 上手になったね」


ぴちゃぴちゃちゃっぷん ちゃっぷんぴちゃぴちゃ

「ねえ、しろくま。」
「なに?」
「きみは 一人じゃないよ」

月の言葉にしろくまは、口をむっとしたまま、開かない

「ひとりじゃないんだよ」
「…ぼくは、ひとりだよ」
「そこから、この空にいる僕は見えるかい?」

なにを訊くんだ、としろくまは思った。
だからそのままに言う。「見えてるよ」

「そこでも、ぼくの声は聞こえるかい?」
「聞こえるよ」
「そこに君はいるかい?」
「いるよ。月は何を言いたいの?」


ぴちゃぴちゃちゃっぷん ちゃっぷんぴちゃぴちゃ


「僕はいるよ。君もいる。 だから、一人じゃない」
「ふーん」

しろくまは無愛想に答えた。
だけど月は知っている。
彼が頬を緩ませたこと、それから瞳を少し湿らせたこと。


「だから、もうおやすみ。明日が来るよ」