あなたが好き、すき、すき、 すき。
たばこは嫌い。
たばこを吸う人も嫌い。
だけどあなたのことは嫌いになれないの。
暇なんだけど、のメールに返事もせずに外へ出掛ける用意をする。
シャワーをあびて、ミニスカートに履き替えて、リップを上手に塗りなおす。
はやくあなたに会いたいなあ、
5つ先の駅までガタンゴトン、短いようで長い距離。
電車を降りてさくさく歩く、赤いパンプスはコンクリートをカツカツ踊る。
途中コンビニによって、あの人の好きなコーヒー牛乳を買う。
うん、これでよし、あとはこの道をまっすぐゆくだけ。
ボロイアパートだけれど、ここがあの人の城。
ピンポーンと押すと、中から「はーい」との声。
今日も出迎えてくれる気はないらしい。
「おじゃましまーす」
「おう、暇人」
「健太郎さんには言われたくないです」
「買ってきた?」
「もちろんです」
コーヒー牛乳は健太郎さんの手に渡る。
渋い顔して似合わない甘い甘いコーヒー。
嬉しそうに受け取るから、その顔が見たいから、忘れない。
隣に座るわけでもない、ましてや手を繋ぐこともない。
ごつごつした指にはさまれたタバコ、
健太郎さんの体にしみこんで、すーっと吐き出される。
なんでもないことしか話さないけれど、
健太郎さんの話はいつもくだらなくって、好き。
それから、タバコを灰皿に押し付けたあと、必ず一つキスをくれる。
わたしのタバコ嫌いをわかってるキス。
わたしの気持ちを知っているキス。
苦くて、煙たくて、残酷、ざんこく。
幸せと苦しさが半分半分。
なんともない顔で笑うわたし、ばかな女。
消えてゆくシャンプーのかおり
本当は隣に座りたい、手を繋いで抱きしめて欲しい。
わたしといる時に知らない人とメールなんてしないで、
電話なんてでないで、ずっとわたしと一緒にいよう、
言えない言葉、永遠に届かない気持ち。
それでもいいよ、それでもいい。
だから今だけは笑って、わたしにだけ、笑っていて。