それは甘い香り



君の首筋に口付ける、真夜中。
お気に入りだと言うワインレッドのセーターの下から忍んだ指先は
やわらかいでこぼこにたどり着く

「…んっ、」

君のその甘い声に香りにラインに
僕はもうとけてしまいそうだ


甘い音の発せられたその赤に吸い付く。
閉じる隙もないほど、唾液を拭き取る暇もないほど
君を求めて、求めて、息も止まる。

「ちーくん、苦しい」

眉を潜めるアユに返事の代わりのいいこいいこ。
それだけで随分満足そうに微笑むから、
頬にかじり付くと、「もー痛いよ、」だなんてかわいい。

ゆっくり手を下げてゆく。
曲線をなぞって下へ、上へ。
アユは少しくすぐったそうに目をぎゅっとつむった

アユの体は細い、思いっきり掴んだら全部ぼろぼろに折れてしまいそうだ
だから、大事に大事に触れる。
何度も何度も抱きしめる。


けれど反対に僕の中の何かがアユを壊したいと願っている
ぼろぼろにして、この手のひらでアユの呼吸をとめてしまいたいと
全てを噛み千切ってしまいたいと、うずく。


君を世界で一番幸せにしたい。
君をどんなものからも守りたい。
だから、君を傷つけるのは僕がいい、
僕の手で君を壊してしまいたい。



じれったくなったのか、まわす腕を強くするアユ
口付けたまま、全てに触れる
すべすべの肌、僕の脳内を犯す君の声、食い込む爪先

暗闇の中ベッドはきしむ、
ぎしぎしと音を立てて揺れる僕らを支える。
痛いくらいに熱い、体の芯が震えた。


「ちーくん」


アユの声に動きを止めた。

「ん?」
「、ふふふ」


「 すき 」


心臓が、止まる
反動で勢いを増す。

「うん」と小さく返事をして愛を続ける、強くなる
汗はとけあって一つになる
アユのどんどん大きくなってゆく声に
僕の鼓動もつられる


もう、何も考えられない。



恋は真夜中



僕の腕の中に君のいる世界で僕は眠り続けたい
すやすやと子供みたいに眠る君の布団を何度だって掛け直すよ

愛してるよ、アユ。